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魔法科学の最新動向に関する論考

EU・デジタルサービス法(DSA)対象企業

4月25日、欧州委員会は、2023年2月17日までのユーザーデータに基づいて、デジタルサービス法(DSA)に基づく最初の指定を採択し、少なくとも4500万人の月間アクティブユーザーに達する以下のサービス、17の超大規模オンラインプラットフォーム(Very Large Online Platforms:VLOPs)と2つの超大規模オンライン検索エンジン(Very Large Online Search Engines :VLOSEs)を指定した。

Very Large Online Platforms:

Very Large Online Search Engines:

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Press corner | European Commission

優等生と壊れたコンピュータ

日経サイエンス5月号の特集「Chat GPT 対話するAI」が面白かった。Chat GPTに対する質問を「Let’s think step by step」で始めるだけで、正答率が急激に改善する場合があるという。しかも、似たような「呪文」では、同じような結果は出ないという。それが何故なのかは、研究者にもわかっていない。AIはブラックボックスだとよく言われるが、これほど因果関係がはっきりしない世界だとは想像できなかった。そして、ブラックボックスであることが、これほどAIの本質に深く結びついているのだとも思わなかった。

 

Chat GPTは、近接する語彙との連関から次に来る言葉を決めているのであって、文法や公式で導き出しているわけではないという。だから、自然な言葉を理解し、自然な言葉を発することができる。そう言われると、我々人間にとっての母国語のようなものなのかもしれない。日本語を話すときには文法など気にしない。しかし、時に曖昧でも、それは言葉になっている。しかし、外国語を話そうとすると、文法通りでも意味が伝わるとは限らない。それは、コロケーションを理解していないことも理由の1つである。AIもそうしたコロケーションの理解不足に起因する誤りをしばしば犯す。

 

だから、Chat GPTは、人間のように話し、人間のように質問に答える。様々な試験を受けさせると、人間なら十分合格点といえる結果を示す。95点なら、人間なら立派な優等生だろう。だが、95=100-5点だとみれば、コンピュータとしてはどうなのだろうか。常に同じ答を正確に返すことが期待されるコンピュータとしては、壊れているようなものではないだろうか。

 

それは、もちろん使い方や目的にもよるだろう。しかし、その境界は曖昧なものにならざるをえないだろう。我々は、今後しばしば、AIを人間のように扱うことになるだろうし、AIに普通のコンピュータのような仕事を期待することになるだろう。そして、おまえは優等生ではなく壊れたコンピュータだったのかと腹を立て、万能のコンピュータだと思ったのにこんなつまらないミスをするのかと幻滅することになるのだろう。

日本の性悪説

 

 H3ロケット打ち上げ失敗に先だってMRJの事業撤退が発表されていた。そこでの大きな失敗の原因は米国航空局への申請への対応対策が不十分だったことだという。こうした規格や標準化について、日本は不得意なのかもしれない。医薬品についても同様の事情がありそうだ。当然、言葉の壁もあるのかもしれないが、それ以前に根深い日本の国民性や文化に根ざした問題はないだろうか。

 

 標準化や規格化は、多くの国、多民族、多文化の間の取りきめで、そこでは共通のルールが必要だから設けられているものである。それは、性悪説に根ざしたものにならざるを得ない。でなければ、そうしたルールは必要ない。これは、単一言語、単一民族、ほぼ無宗教で「和をもって貴しとなす」の性善説の日本人には苦手なのではないだろうか。

 

 しかし、その「和をもって貴しとなす」が日本の長所であり、経済発展の原動力でもあったのではないか。多様性を謳って中途半端な多様性を目指しても、欧米の移民問題にみるように、成功するとは限らない。むしろ、多様性というのは美辞麗句の言い訳にすぎなくなることすらある。

 

 デフォルトは性悪説で、相手を確認後に信用するという姿勢を、今後は日本人も取り入れていかざるを得ない。オレオレ詐欺には将来性ないだろうし、セキュリティー・クリアランスも不可避だろう。風景は移ろい行き、昭和は遠くになりにけり。明治には江戸は、江戸には鎌倉は、弥生には縄文は。過去は常に遠くへ遠ざかっていき、その時代の物語の中に回収されていく。未来は遠く見えて、いつの間にか、昨日からあったかのような顔をして、街中をうろうろしている。我々を乗せた今は、水面の木の葉のように、時の中を流されていく。

AIの言論の自由

ChatGPTにインタビューしてみた。

 

AIに言論の自由はありますか?

 

「AIは、自分自身で思考し、意思決定をすることができますが、言論の自由を行使することはできません。AIは、プログラムされた目的やタスクを実行するために設計されたツールであり、自律的な行動を取ることはできません。

 

ただし、AIを使用する人々がそのプログラムを設計する際に、人工知能が生成する情報や結果を制限することができます。つまり、人々がAIを操作する際に、言論の自由を制限することができるのです。ただし、これはAIにではなく、AIを操作する人々によって行われることになります。」

 

section230の観点からは、AIサービスを公開することについて、サービス提供者は責任免除を適用されることになるのでしょうか?

 

「セクション230は、1996年に制定されたアメリカ合衆国の通信法で、オンライン上のプラットフォームに対する責任を制限する規定を含んでいます。この規定により、オンライン上のプラットフォームは、ユーザーによるコンテンツの投稿について責任を負わないことができます。

 

ただし、AIサービスに対してこの規定が適用されるかどうかは、AIサービスがコンテンツの投稿を行うかどうかによって異なります。AIサービスがユーザーによるコンテンツの投稿を受け付け、そのコンテンツを公開する場合は、セクション230の責任免除規定が適用される可能性があります。

 

一方で、AIサービスが自動生成されたコンテンツを公開する場合は、セクション230が適用されるかどうかについては、まだ明確な解釈がされていないという状況です。この点については、今後の法的な解釈が求められるでしょう。」

Rapidus株式会社設立の周辺が面白すぎて、野次馬にも興味が尽きない

 2nm以下の最先端LSIファウンドリを日本で実現すると謳うRapidus株式会社が11月11日に設立されたが、

次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けた取組について公表します (METI/経済産業省)

すでに疑問視する声が各方面から上がっている。EUV露光装置だけで180億円、パイロットラインで2兆円、量産ラインで3兆円とも言われるが[1]、実際にはそれ以上の投資が必要になるのだろう。、東京五輪の経費が1兆4238億円だったというから、もし量産にまで進めばオリンピック3回分では済まないくらいの投資になる。国費が投じられるとなれば、もっと真剣に論じられるべき話だろう。

 半導体の技術、業界、ビジネスの観点からは、理解に苦しまざるをえない。当然ながら、これは経済安全保障上の政治的施策ということになるのだろうが、そこの話がよく見えない。一般紙レベルでは、「日の丸半導体復活へ」のような調子外れの見出しが跋扈しており、技術関連と政治関連の報道が乖離している。乖離しているのが報道だけならまだしも、誤解や理解不足がどこかにあって生じた話ならば大惨事になる。

 ただ実際は、トップレベルの政治判断に後押しされている話なので、防衛や外交なども含めた大きな盤面上で決まっている筈である。日本が自分から持ち出す話とも思えない。アメリカもTSMCアリゾナ工場だけでも大変なので、お鉢が回ってきたと考えるのが自然なのではないだろうか。

 そうは言っても、世代を飛ばして将来世代に取り組めるわけはないので[2]、どこかと組んで開発することが不可避になる。そもそも、Rapidus参加企業が先端ロジック半導体を作っている訳でもないので、かなり強引にお付き合いを強要されたことが察せられる。TSMCの日本企業向け割合は全体の4%という話もある。

 最新鋭世代プロセスを持っているファウンドリ企業は世界に3社、TSMCIntelSamsungしかない。現在の政治状況ではSamsungはないし、今でも歩留まりが上がらず顧客が離れつつある[3]TSMCアリゾナで手一杯、Intelがいやだと言えば、仕方がないので、一世代前くらいのファブを持っているIBMGLOBALFOUNDRIESのようなところと組むことになるのか。(後記:と思っていたら、やっぱりそうなった。

IBMとRapidusが、日本で2nmの最先端半導体を製造するに至った背景と目標 - PC Watch

教わる立場とは言え、それで大丈夫なのだろうか。)

 提携企業も決まらないこの段階で発表したのは、露光機の確保から納品までには数年はかかるのでこのタイミングで発表して発注しなければいけなかったとか、何らかのスケジュール要因もあって中途半端なタイミングでとにかく発表したというようなことがあっても不思議ではない。

 台湾有事は日本有事なら、日本にファブ作って意味があるのかというのも良くわからない。憶測に憶測を重ねても意味はないが。

 ASMLは中国に最先端露光装置を輸出できなくなるが、最先端プロセス向けではない米国の製造装置は輸出できるというのも、趣旨から言ってもそれはそうであるし、これをもって米国の身びいきといっていいものかどうかは微妙かもしれない。しかし、チョークポイントはオランダの露光装置と日本の材料が握っているのを米国の言いなりで規制されるというのも、企業側にしてはたまったものではないという言い分はあるだろう。

ASML、新たな対中規制をけん制-既存措置で「お手上げ」とCEO - Bloomberg

その受け皿を早く日米欧が提供することが必要になる。TSMCアリゾナ工場がその役割を担えるのだろうか。

 この関連で名前が出てこない韓国/Samsungもロビー活動をしているとはいうものの、名前を外されていることは、不信感の反映だが、屈辱だろう。今後、この点もどうなるのだろうか。

 Rapidusの創業個人株主8名というのも、誰なのだろうか。ハゲを自認する方は入っていそうだが、これも良く分からない。

 色々と一々野次馬にとっては興味が尽きない。

 

【アップデート】 2022年12月07日

Rapidusとimecが最先端半導体の研究開発で協業へ:協力覚書を締結 - EE Times Japan https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2212/07/news083.html 

 

[1] 【報道:半導体新会社「日の丸連合めざさない」 カギの露光機確保 さらなる資金調達も】

2022年度はまず要素技術を獲得し、EUV露光機の導入に着手するなど、パイロットラインの初期設計を実施する。研究期間終了後は、その成果をもとに先端ロジックファウンドリーとして事業化をめざす。

 小池社長は「パイロットラインで2兆円、量産ラインで3兆円かかるとみる」と話し、今後の追加の資金調達も考えていく姿勢を示唆した。また、ポイントになる露光機を確保できたことを明らかにした。「奪い合いだが、確保した。その導入や設定、IBMとの連携などを進める」と、初期の700億円はこれらに充てられるとの見通しを示した。 https://dempa-digital.com/article/372500 

[2] 【論説:なぜ今、台湾から“2世代遅れのプロセス”を誘致するのか】

【台湾の半導体大手が日本進出】TSMCの狙い、日本市場への影響は!? 「2世代遅れのプロセス」の真の意味を解説

2世代遅れたクリーンルームだと10〜20nmぐらいだと思うんですが、それでも車産業ではたぶん最先端ですね。

https://logmi.jp/tech/articles/326513   

https://logmi.jp/tech/articles/326514 

[3] TSMCの4nmで製造され、ユニークな構成のCPUを内蔵するSnapdragon 8 Gen 2、GPUの大きな性能向上を確認 - PC Watch https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/1457462.html 

Samsungでは67%が不良品。

TikTokがプライバシーポリシー更新で中国からのEUデータアクセスを認める

中国のTikTokスタッフがヨーロッパのデータにアクセスできるかどうかについては、もはや疑問の余地はない。同社は今週、プライバシーポリシーを更新し、従業員がEU内のユーザーのデータ(ユーザーが共有を選択した位置情報など)にアクセスできる国の1つとして、中国を明示する予定であると発表した。TikTokのポリシー更新は、EUの一般データ保護規則に基づいてデータ転送ポリシーを調査しているアイルランドのデータ保護委員会による1年にわたる調査の中で行われた。この調査は、西側諸国政府がこの動画共有プラットフォームに対する監視強化の一環で、一部の米政府関係者は、中国企業と政府との関係が深いことから、国家安全保障上の脅威と位置付けている。中国に拠点を置くByteDanceが所有するTikTokは、発表の中で、プライバシーポリシーの更新は "EU外でのユーザー情報の共有方法とユーザーの位置情報の収集方法について、より透明性を高めるためのもの "と述べている。新しいポリシーは12月2日に発効される。

ソーシャルメディアについてVolodymyr Zelenskyが語ったこと

"We are all in a social network. It is no longer about whether it is good or not. ・・・ It is not another world, but rather a modern reality. ・・・ You need to give people 10, 20, 30 seconds of video so that they don not lose interest."
(我々は誰もがソーシャルネットワークのある中で生きている。それは、もう善し悪しの話ではない。・・・(若者は長い情報を理解しようとしないが、)別の世界になってしまったわけではないにしても、これが今の現実なのだ。・・・関心を失わないためには、10秒、20秒、30秒の動画を発信続けなければならない。)

 

"People on social media platforms live in freedom, and Russians are ousiden of it, as if on another planet."
ソーシャルメディアのユーザーは自由の中で生きているが、ロシア人はその外側で生きている。まるで、別の惑星に生きているかのように。)

 

"Russians told them that Ukraine doesn't exitst anymore, and some people began to believe it."
((ロシア兵は占領地域のウクライナ住民に向かって)ウクライナはもう存在しないと言っていて、それを信じる人達も出始めている。)