Starlink
SpaceX社CEO、Elon Muskは、ウクライナの要請に応えて、2022年2月27日、「スターリンク」がウクライナで利用可能であると発表した。この支援については背後で米国政府が援助しており、旗艦モスクワ撃沈の衝撃を受けたロシアはスターリンクを標的とした攻撃を考えているとも言われる。
「スターリンク (Starlink)」は、米SpaceX社が、多数の低軌道衛星と地上の送受信機の協調動作により地球上ほぼ全ての地域に衛星インターネットアクセスサービスを提供すべく、2014年から進めている衛星コンステレーション*1開発計画である。2020年代中頃までに総数約12000基の人工衛星を3階層に渡って展開することを計画している。高度550kmの約1600基の衛星に続き、高度1150kmのKu/Kaバンド(それぞれ、12~18GHz、26.5~40GHz)を用いる約2800基の衛星、さらに高度340kmのVバンド(402~75GHz)を用いる約7500基の衛星を利用する。設計・製造・打ち上げなどの計画総費用は、100億ドル近くに達するとみられている。
衛星はKuバンドとKaバンドの光衛星間リンクとフェーズドアレイ・ビームフォーミング*2、デジタル処理技術を採用する予定である。スターリンク衛星は、静止軌道の1/105から1/30の高さの軌道を周回しているため、地球から衛星までの遅延時間は25msecから35msec程度と、既存のケーブルや光通信網に匹敵する実用的なものである。シンプルなピアツーピアのプロトコルを使用し、エンドツーエンド暗号化も組み込まれる。
2021年9月時点で、17カ国でベータ版サービスが提供されている。日本では、KDDIと業務提携している。2019年に米国連邦通信委員会(FCC)は国際電気通信連合(ITU)に対して、SpaceX向けに3万基の追加衛星用周波数を申請している。SpaceXは、Google Cloud PlatformおよびMicrosoft Azureと地上ネットワークインフラを利用する契約を結んでいる。天体観測への悪影響、落下や衝突への安全対応なども進められている。スターリンクを巡っては、フランスでの独占禁止上の問題提起やAmazonの参入など話題が尽きない。